小 学 生 の こ ろ


 
    高等小学校のころの牧水



     尋常4年の時に読んだ  
       小説「朝日桜」
  われいまだ 十歳ならざりき 山渓の
      たぎつ瀬にたちて 鮎は釣りにき



 牧水は五歳の時父が隣村の西郷村小川に分院を建てましたので一
家でそちらに 転居しました。

 そんなことで、牧水は明治二十五年四月、田代尋常小学校に入学し
ました が一日も登校しないので母が心配して、東郷村山陰の叔父宅に
預げ、義兄の今西 吉郎が校長の羽坂尋常小学校に転校させましたが
これも続かず再び小川に引取 られ、その秋一家が坪谷に帰りましたの
で、牧水は一年生の二学期から明治二十 九年三月、尋常四年を卒業
まで坪谷尋常小学校で学び、近所に高等小学校が無い ので五月延岡
高等小学校に進みました。
 
 坪谷尋常小学校時代の同級生だった人達はその頃の牧水の思い
出を次のよ うに語っています。

 
 
 「牧水君はよくできましたよ、成績はいつも一番だった。          読書が好きで登校の時も下校の時も本を手から離さなかった。  
或る時校長先生が女生徒に指輪をして来ないようにと注意され
たのに二、 三人の女の生徒がなおして来ていたので、オレた
ちが話合ってそれを抜き取って 石で叩いて使われないようにし
て石垣の穴に投げ込んだことがあった。 そのこ とが校長先生
の耳に入りオレたちが罰席に立てられて誰がしたのかと強くた
ずね られ、皆頭をさげてだまっていたら牧水君が 『私がしまし
た、許して下さい』 と皆の罪を独りで担ってくれた事があった。

  夏になると一緒に坪谷川に水泳に行った。
オレたちは川に行くとすぐ着物を脱いで小川に飛び込んだが、
牧水君は着物をたたんでその側に履物をきちんと置いて目じる
しの石まで立てて水に入りま したよ。こんなにきちょうめんでし
た」